債務整理の種類について
債務整理とは借金を整理するために利用できる制度の総称です。ですから債務整理といってもいくつかの種類があり、実際に利用を検討する場合にはどの方法が自分に最も適しているのかをよく見極める必要があるのです。
もっとも一般的なのが任意整理。裁判所を通さずに当事者同士で話し合ったうえで解決を図る方法です。減額できる借金の額は限られますが、その分スムーズに交渉が進む、面倒な手続きが必要ないといったメリットがあります。
それから個人再生。こちらは裁判所を通して借金を減額する制度で、1500万円までの借金なら5分の1にまで減らすことができます。多額の借金を抱えている人に適している制度で、マイホームを手放さずに利用できるなどのメリットもあります。
任意整理ではうまく交渉が進まなかった場合には、裁判所に間に入ってもらう形で当事者同士が交渉する個人調停という選択肢もあります。任意整理よりも交渉がまとまりやすい傾向がある一方、万一交渉成立後に返済が不能になった時には、債権者による財産の強制的な差し押さえが可能になるため、綿密な返済計画のもとで交渉を進めていく必要がある制度とも言えます。
そして借金のすべてを帳消しするのが自己破産。債務整理というとまずこれを連想する方も多いかもしれません。ただ注意したいのは必ず自己破産で帳消しが認められるとは限らないこと、連帯保証人がいる借金の場合、自己破産すると連帯保証人に迷惑をかけてしまうことなどあらかじめ知っておかなければならない部分もあります。
このように債務整理の種類にはそれぞれ特徴があり、メリット・デメリットを見極めたうえでの評価が求められるのです。なお、どの種類でも債務整理の手続きそのものにかかる期間は3〜6か月程度とそれほどかわりません。ただ任意整理・個人調停の場合は債権者との交渉内容次第では長引いてしまうこともあります。
任意整理の場合の債務整理とは?
任意整理はもっとも広く行われている債務整理の選択肢です。借金の返済に困ったらまずこの選択肢を検討することになるでしょう。
この選択肢の最大の特徴は債権者との話し合いによって借金の減額、または利息のカットを実現することです。あくまで当事者同士の話し合いで和解・解決が目指されるため、裁判所を通さずに進めていくことができます。
それほど借金の額が多くない場合、あるいは一定の収入があって返済の負担を少し減らすことができれば返済可能な状況になれる場合に適した方法です。
ただ借金をうまく返せずにいる債務者が直接債権者と交渉するとなるとどうしても精神的に負い目を感じてしまうため、なかなか思うように進められないケースも見られます。交渉したのはいいものの終始債権者のペースで進められてしまい、思ったほどの減額が実現しない可能性もあるのです。実際この方法では、借金の減額よりも利息のカットで落ち着くパターンが多いと言われています。
また当事者同士の同意が必要ですから、消費者金融などなかなか和解に応じてくれない相手が債権者にいる場合には交渉が決裂してしまうこともあります。
こうした事情から通常は弁護士に依頼し交渉を代行してもらうことになります。ですからその費用も考慮したうえで準備をしていくことになるのです。なお、弁護士に依頼すると弁護士から債権者に受任通知が送付される段階で借金の取り立てがストップします。
この任意整理で借金の問題を解決できるのかどうかは、借金の額だけでなく債権者の種類や自分の生活状況なども考慮したうえで判断することになります。
個人再生の場合の債務整理とは?
個人再生(個人民事再生)とは民事再生法に基づいて借金の減額を行う制度です。この点が当事者同士の話し合いによって減額が行われる任意整理や特定調停のおもな特徴です。
この制度の最大の特徴は減額できる借金の額が非常に大きい点です。1500万円までの借金なら5分の1まで、さらに3000万円〜5000万円までの借金なら10分の1まで減額することができます。任意整理では返済しきれない額の借金を背負ってしまっている場合、自己破産は避けたいと思っている場合に非常に適した方法と言えるでしょう。
この制度のもうひとつの大きな特徴は住宅ローン特則が適用される、つまりマイホームを手放すことなく、住宅ローンはそれまで通り返済し続けることができるのです。債務整理はしたいけれどもせっかく手に入れたマイホームは手放したくない、そんな人に適しているでしょう。
さらにマイホームを含めた個人の財産が差し押さえられることがなく、生命保険や預貯金なども残したうえで借金の減額を行うことができます。できるだけこれまでの生活を維持しながら借金の返済を行っていきたい場合にも向いている制度でしょう。
もうひとつ、自己破産の際にはしばしば認められない原因となるギャンブルや過度な浪費による借金の減額でも利用できます。
こうして見ると非常に魅力的な選択肢にも思えますが、デメリットもあります。借金を減額した後にどのように返済していくのか、再生計画を立案したうえで裁判所に提出する必要があるなど手続きが大変なのです。弁護士や司法書士などの士業に依頼して行うのが基本なので費用が掛かってしまうでしょう。またブラックリストに掲載されてしまうので、一定期間(5〜10年程度)はローンやクレジットカードの利用に制限が課されます。
特定調停の場合の債務整理とは?
裁判所が仲介に立ったうえで債務者と債権者の和解を目指すのが特定調停です。任意整理の場合、通常は弁護士が間に入る形で当事者同士が話し合って和解や借金の減額を目指していきますが、交渉がうまく進まない場合にはこの特定調停に持ち込まれることがあるのです。
この特定調停の特徴は、裁判所が仲介に入るため弁護士に依頼しなくても可能な点、任意整理に比べてより交渉が進みやすい点が挙げられます。ただ実際には弁護士や司法書士など士業に依頼したうえで手続きを進めていくのが一般的です。
もうひとつの特徴は特定調停が成立した際には「調停調書」という書類が裁判所によって作成されます。これは借金の減額が認められたことを示すと同時に、万一再び返済が滞ってしまった場合には債権者が給料などの財産を差し押さえる強制執行の権利を認める効力も持っています。
任意整理の場合はこのような強制的に差し押さえる権利は債権者に認められていませんが、こちらは法律のお墨付きを得た形で差し押さえが可能になるのです。ですから債務者としてはリスクも覚悟したうえで交渉に臨む必要があります。なおこの調停調書は裁判の判決と同等の効力を持つ非常に強いものです。
そしてもうひとつ、任意整理と同様に債権者の同意が大前提であり、裁判所が仲介に入れば必ず期待通りに借金の減額が行われるわけではありません。また交渉は裁判所が行ってくれるわけではなく、あくまで本人が行います。任意整理に比べて交渉が成立しやすい面があるものの、決して簡単なものではないことも頭に入れておくべきでしょう。
自己破産の場合の債務整理とは?
自己破産は債務整理の中でも「最後の手段」ともいえる選択肢となるでしょう。背負っている借金をすべて帳消しにできるという意味では、返済の苦しみから解放される究極の手段とも言えます。
ただこの制度はメリット・デメリットと両面で誇張されたイメージが持たれている面もあるので注意が必要です。この制度のポイントは裁判所が借金の帳消しを認める形で成立します。ですから裁判所からダメと判断された場合には、借金を減らすことができないのです。
例えばギャンブルなど過度な浪費が原因で借金を重ねてしまった場合には、認められない可能性が高くなります。贅沢な暮らしを送ったうえで借金を返せなくなったら自己破産すればいいや、とはいかない面もあるわけです。
なお、借金を帳消しするかわりに財産のすべてを失うイメージもありますが、最低限の財産は保証されます。例えば時価20万円以下のものは手放す必要がなく、預貯金は20万円、現金は99万円まで残すことができます。この範囲内でゼロから再スタートを切ることになるわけです。マイホームやマイカーといった高額な財産は手放さなければなりませんが、すべてを失ってしまうわけではないのです。
一方、よく知られているのが金融信用情報のブラックリストに掲載されてしまう点です。これによってお金を借りたりクレジットカードを作るのが難しくなってしまいます。このブラックリストへの掲載は5〜10年ほどで、記録から抹消されるとまたお金を借りることができるようになります。一生ついてまわるわけではない点は覚えておくべきでしょう。
自己破産が認められた場合、官報に氏名と住所が掲載されますが、一般人がこれに目を細かく目を通すことは滅多にないため、職場や近所の人たちにバレる心配はほとんどありません。社会的な信用を失ってその後の生活に支障をきたすといったデメリットはほとんど気にしなくても大丈夫でしょう。