債務整理と自己破産の違いについて

債務整理と自己破産の違いについて

 まず知っておく必要があるのは、「債務整理」とは自己破産も含めた返済が厳しくなった借金に対する対策方法の総称だということです。ですから債務整理と自己破産の違いとは、具体的には自己破産とそれ以外の債務整理の選択肢、つまり任意整理、個人再生、特定調停との比較ということになります。

 

 最大の違いは借り入れをどれだけ減らすことができるかです。自己破産の場合は全額が「帳消し」される形になるのに対して、他の方法では一部が減額される形になります。ですから返済不能に陥ってどうにもならない状況に陥ってしまった場合には、自己破産の方が適していることになります。

 

 一方、債務整理をするうえで自分が所有している財産がどうなるのか、という点にも大きな違いがあります。例えばマイホームを所有している場合、自己破産の場合はそれを処分して借金の返済に充てたうえでの整理となるのに対して、他の方法ではマイホームを残しながら借り入れを減らしていく道を用意することもできます。この点が自己破産を選ぶかどうかの一つの重要な判断基準となるでしょう。

 

 もうひとつ、自己破産以外の方法は借金を背負っている本人の意志だけでなく、債権者の意志も反映される点にも違いが見られます。話し合いで解決するにしろ、調停に持ち込むにしろ、自分の都合だけで借金を減らすことはできないわけです。

 

 自分の都合と言えば、自己破産は必ずできるわけではありません。自分は返済不可能と思っていても、裁判所はそう判断せずに受け入れないこともあります。こうした違いを踏まえたうえで、最適な債務整理を検討していくことになるわけです。

 

債務整理と自己破産をした際の連帯保証人への影響は?

債務整理と自己破産をした際の連帯保証人への影響は?

 債務整理においてもっとも注意したいのが連帯保証人への影響です。せっかく信用して連帯保証人になってくれたのに債務整理によって迷惑をかけてしまう、恩をあだで返すような状況になってしまうこともあるので気を付けなければなりません。

 

 自己破産と他の債務整理における連帯保証人への影響でもっとも大きな違いとなっているのが「求償権」の扱いです。任意整理や個人再生の場合、連帯保証人が肩代わりして返済しなければならなくなった場合、その連帯保証人は債権者に対して「その分を自分で払え」と請求することができます。ところが自己破産になった場合にはこの権利が消滅するため、債務者本人は借金から解放されたにも関わらず、連帯保証人は借金を肩代わりし続けなければならない可能性も出てくるわけです。

 

 ですから、債務者が自己破産することで連帯保証人も道連れになるような形で債務整理に追い込まれてしまう可能性も出てくるわけです。これが自分の都合だけで債務整理を行うわけにはいかない最大の理由です。

 

 借金の返済が難しくなった場合には、まず任意整理など連帯保証人に迷惑をかけない形での対策を考えること、そのうえで自己破産以外に選択肢がなくなってしまった場合には必ず事前に連帯保証人にそのことを説明し、理解を求めることが絶対条件となります。連帯保証人に何も告げずに自分で勝手に自己破産の手続きをするといったようなことは絶対に避けましょう。

 

 また連帯保証人を頼まれた時には、万一債務整理が行われたときにこのような問題を抱える可能性があることを頭に入れたうえで受けるかどうかを検討する必要もあるでしょう。

 

債務整理と自己破産の手続きの仕方とは?

債務整理と自己破産の手続きの仕方とは?

 債務整理のポイントは弁護士に依頼することです。弁護士が依頼を受け付けたことを証明する受任通知が行われた段階で、債権者は借金の取り立てができなくなるからです。これによって精神的なプレッシャーから解放されます。

 

 書類の作成などを弁護士に任せることができるほか、債権者との交渉も行ってもらえます。任意整理などの場合、自分で直接交渉するとなるとどうしても借金を抱えている負い目からうまく進まないこともあるので、やはり弁護士に依頼するのが理想的です。

 

 自己破産や個人調停の場合は裁判所に申し立てを行う必要がありますから、弁護士と裁判所で面接が行われます。例えば自己破産の場合にはどうして自己破産に至ったのか、詳しい経緯を説明する必要があるのです。本人が出席する必要がない場合もありますが、基本的には直接赴く必要があると考えた方がよいでしょう。この面接の内容によっては借金の帳消しが認められないこともあるので要注意です。

 

 手続きの方法に関しては処分する財産があるかどうかによっても異なります。処分して債権者に分配するだけの財産がない場合は「同時廃止事件」といい、比較的スムーズに手続きを行っていくことができますが、財産がある場合には「管財事件」または「少額管財事件」と扱われ、破産管財人による財産の処分が必要になります。その分3〜6か月程度の期間がかかるほか、弁護士費用も高くなるので気を付けましょう。なお、ギャンブルなどの理由で裁判所で債務整理を行う場合には、処分する財産がない場合でも管財事件として扱われることもあります。

 

債務整理と自己破産どちらが仕事への影響を及ぼすか?

債務整理と自己破産どちらが仕事への影響を及ぼすか?

 自己破産とそれ以外の任意整理や個人再生といった債務整理を行った場合では、どちらがその後の仕事に影響を及ぼすのか?心配している方も多いはずです。どちらの方が影響が大きいのかは環境によって異なるため、どのような影響が生じて、それが自分にどのような影響を及ぼしそうかをよく検討しておくことが大事です。

 

 まず知っておきたいのは、自己破産をしたからといって会社を首になるといったことは基本的にはない点です。もし会社に自己破産の事実を知られてしまいクビになってしまった場合には、不当解雇として訴えることもできます。

 

 ただし、自己破産によって特定の職種に就けなくなるケースもあります。弁護士などの士業、貸金業者のような金融関連、さらに警備員や建設業、風俗業、そして一部を除いた公務員なども就業に制限が設けられることになります。ただし、これらの制限はあくまで一時的なもので、自己破産の申し立てを行った段階で制限が発生し、免責許可が確定した段階で消滅します。これを復権といいます。通常免責許可が下されるまでには半年程度かかるので、その期間中これらの職業で制限を受けることになるわけです。

 

 影響という点では他の債務整理の方が大きいかもしれません。借金が帳消しされるわけではないので返済し続ける必要があるほか、弁護士や司法書士といった士業が間に入るとはいえ、債権者との話し合いが必要になるので精神的なプレッシャーを抱え続けるといった問題が出てきます。つまり仕事に集中できない、残った借金を返済するために転職しなければならないといった事情で影響が出てくる可能性もあるわけです。

 

 もうひとつ、自己破産の場合、給料やボーナスの一部が差し押さえられる可能性があります。手取りの給料のうち3分の1までは差し押さえが可能になっており、その後多くの収入を得ることができても手元に残る分が制限されてしまうのです。この点にも注意しておきましょう。